Critical Content-Based Instructionを目指した会話授業－多文化共生をテーマに－

朝向Critical Content-Based Instruction的會話課程－以多元文化共生為主題－｜Japanese Conversation Course Based on Critical Content-Based Instruction: Under the Theme of ＂Multicultural Symbiosis＂

中村香苗(Kanae Nakamura)

Critical Content-Based Instruction ； Content-Based Instruction ； 多文化共生 ； 日本語会話授業 ； Critical Content-Based Instruction ； Content-Based Instruction ； 多元文化共生 ； 日語會話課程｜Critical Content-Based Instruction ； Content-Based Instruction ； Multicultural Symbiosis ； Japanese Conversation Course

銘傳日本語教育

22期（2019 / 10 / 01）

69 - 91

日文

本稿は、クリティカルアプローチを取り入れた言語教育（Critical Content-Based Instruction：CCBI）を台湾の日本語授業に応用した実践報告である。CCBIとは、「社会に存在する複雑で様々な力関係に注目し、より公正で平等な社会づくりを目指すこと」（佐藤他2015:19）を理念とした教育アプローチだ。筆者は、自らが台湾で「移民」および「在台日本人」として生活してきた経験にもとづき、三年生の会話授業で「多文化共生」をテーマに日本と台湾の移民やマイノリティを取り巻く問題に対する学生たちの意識を喚起する授業を行った。具体的には、外国人労働者や外国人児童の教育問題、人種差別などをサブテーマに、読解教材から学ぶだけではなく、当事者へのインタビューや他者になりきったスピーチ、グループプロジェクトを通して、「知る．気づく」、「考える」、および「行動する」ことができるようになることを目指した。その結果、授業開始当初は台湾に住む外国人の存在を意識したことがなかった学生たちが、次第にその存在に気づき、移民やマイノリティの問題を自分事として考えることができるようになった。今後のシラバスの改善点として、社会に働きかけをするようなプロジェクトを取り入れたり、他学科や他科目の授業と連携して内容学習をさらに深めたりといったことが考えられる。

本文是探討“Critical Content-Based Instruction（CCBI）方法論如何應用於台灣的大學日語會話課程的實踐報告。研究結果顯示，CCBI可以培養學生對於一般社會中複雜與不公平權力關係的意識。以「多元文化共生」為主題，在本研究的第三年日語會話課程當中，學生積極討論了外籍勞工、外國子女教育、種族歧視等議題。透過相關文章新聞等閱讀，加上進行訪談、角色扮演、及研究報告，本課程試圖讓學生意識、反思社會弱勢族群議題，並採取行動。學期末所展現的結果為，在學期開始沒有意識到身邊外國人存在的台灣學生，最後能將弱勢族群面對的問題當作自身的課題。今後課程設計可以改進的地方在於，讓學生試著加入「社會改革」的計畫構思，並且進一步思考連結其他課程與其他學科的可能，以求在不同面向上深化多元文化的學習。｜This article demonstrates how a Japanese conversation course of a Taiwanese university can adopt the philosophy of ＂Critical Content-Based Instruction (CCBI)＂ and cultivate students' awareness of complicated and unfair power dynamics in society. Under the theme of ＂multicultural symbiosis,＂ the 3^(rd) year conversation course dealt with various topics including foreign workers, foreign children's education, and racial discrimination. Through not only reading articles but also conducting interviews, role-play and research projects, the course aimed to make students ＂notice,＂ ＂reflect＂ and ＂act on＂ the issues regarding social minority groups. As a result, the students, who did not recognize the existence of immigrants in Taiwan at the beginning of the semester, had become enable to consider the minorities' issues as if they were their own problems by the end of the semester.

1. Wallace, Catherine(2003).Critical Reading in Language Education.NY:Palgrave Macmillan.
2. 平田オリザ(2012)。わかりあえないことから—コミュニケーション能力とは何か。講談社。
3. 佐藤慎司編、高見智子編、神吉宇一編、熊谷由理編(2015)。未来を創ることばの教育をめざして—内容重視の批判的言語教育（Critical Content - Based Instruction）の理論と実践。ココ出版。
4. 東海大學日本語言文化學系(2018)。多文化交流，10
5. 松永稔也(2018)。言語の社会的位置付けを考える授業台日社會語言分析（一）（二）—授業で目指したこと、成果と今後の課題—。多文化交流，10，90-120。
6. 福島青史(2011)。「共に生きる」社会のための言語教育—欧州評議会の活動を例として—。リテラシーズ，8，1-9。